『可愛くてごめん』の本人演奏から学ぶポップスピアノ伴奏の極意

2023年2月9日コラム

素晴らしい教材を発見しました。Honey Worksキーボーディスト、宇都圭輝さん本人による『可愛くてごめん』の演奏動画です。こちらにポップスピアノ伴奏のエッセンスがめちゃくちゃ詰まっています。是非一緒に見ていきましょう。

イントロ(0s-13s)

イントロのフレーズはサビのメロディを受け継いで演奏していますね。左手はコードのルートを演奏。両手ともにオクターブで力強い演奏です。最後の2小節は高音域に移動し、メロディー・ベースもオクターブではなくコードトーンを用いてまろやかできらびやかな音色に。Aメロに入る前にはグリッサンドを入れています。

Aメロ(13s-24s)

基本奏法はコードの白玉(二分音符)ですが、右手は歌のメロディーのリズムに合わせてフレーズを演奏しています。細かく動いているように聞こえる音はほとんどコードトーンです。左手はコードの転回系を用いたカノン進行の動きですね。音域は全体的に高め。最初の2拍はペダルでゆったり、後半はペダルオフで歯切れよく。

Bメロ前半(24s-30s)

左手は1-5-8(G:ソレソー、A:ラミラー、D:レラレファ♯ー)の動き。右手は高音域でコードトーンのアルペジオ。Dの部分だけノンコードトーンでメロディアスな動きをしています。そして何よりBメロ折返しの「ファ♯ – ソ – ソ♯ – ラ – ラ♯ – ラ♮ – ソ♯ – ソ♮ 」の半音階フレーズが粋です。これはDのコードから見て「M3 – P4 – aug4 – P5 – aug5 – P5 – aug4 – P4」という動き。M3〜P5まではよくあるフレーズですが、少しはみ出してaug5まで行くと聞き慣れない響きがしますが、一瞬の音使いなのでそれがよきスパイスになって心地よく耳に残りますね・・・!

Bメロ前半(30s-42s)

後半はリズムを変えて、「ターーン、タターーン(付点四分+八分+二分)」といういわゆる「PPPH」のリズムが貴重となっております。演奏自体はコードトーンでの和音が主ですが、音域の移動がすごいですね。同じところでの演奏ではなく、低い方へずらしたり高い方へずらしたりしてサビ前まで盛り上げます。サビ前は「(しあ)わせだもん [ファ♮ファ♮ミレミ]」の歌詞に合わせてフレーズ[ファ♮ファ♮ソラミ]を演奏した後、1拍目に低音ベース、2拍目に低音グリッサンド、3拍目に高音グリッサンドと更に音を厚くしていきます。

サビ(42s-1m06s)

左手がコードのルート音をオクターブでばらして演奏。右手はややメロディに寄り添ったオクターブのフレーズを四分音符のリズムで演奏。前半はオクターブで、後半はコードトーンを少しずつ織り交ぜてまろやかな音に。動画を見ていると手の動きが少なくなったのが分かると思います。前半と後半のつなぎ目にある8つの音階フレーズは「レ – ミ – ファ♯ – ソ – ソ♯ – ラ – シ – ド♯」(R – M2 – M3 – P4 – aug4 – P5 – M6 – M7)で、Dメジャーのスケールにaug4を足したものとなっています。ラスト2小節(ムカついちゃうよねざまぁ)の直前に高音グリッサンド。

サビ終わり(1m06-1m09s)

歌詞を聞かせるためにあえて音を抜いている箇所。イントロ終わりのフレーズの伏線を回収したような気持ちよさがあります。ここはコードの切り替えに合わせてコードトーンを演奏しています。

間奏(1m09s-1m21s)

ここはイントロとほぼ同じ。最後に右手のミニグリッサンドが入ります。

2番Aメロ(1m21s-1m33s)

1番とガラリと変わった奏法です。ペダルはずっとオフで歯切れの良いフレーズが続きます。右手は16分音符も織り交ぜて、1番より軽やかなフレーズ。左手はオクターブ交互ベース。Bメロの前は「その陰口」の歌詞に合わせて右手でフレーズを演奏した後、グリッサンド。

2番Bメロ(1m33s-1m51s)

ややアレンジはありますが、基本的には1番Bメロと同じ動きです。

2番サビ(1m51s-2m18s)

こちらも1番サビとほぼ同じ動き。

Cメロ前半(2m18s-2m30s)

コードトーンの広いアルペジオで、やさしくキラキラした感じの音色。

Cメロ後半(2m30s-2m42s)

ピアノソロを匂わせるフレージングな動きが出てきます。音域の移動も大きく、三連符の崩したリズムも登場。

間奏(2m42s-2m54s)

落ちサビ(2m54s-3m09s)

コードトーンを2分音符・高音域・弱いベロシティで切なく演奏。二回し目はVImからの半音下降クリシェで変化をつけています。

ラスサビ(3m09s-3m24s)

1番、2番サビの二回し目とほぼ同じ動きです。

エンディング(3m24s-3m37s end)

イントロと同じくサビのフレーズを演奏。イントロとの変化としては、左手のオクターブベースが交互になっていることと、最後まで力強く演奏すること。最後のグリッサンドもリズムを感じて4拍目に収まるように。

所感:ポップスピアノのすべてが詰まっている

このサイト、一ヶ月近くかけて初心者コンテンツを整備したのですが、この動画一本で初心者〜中級者まで使えるピアノ伴奏のパターンが網羅されていて敵わないです・・・!特に右手のパターンはコード演奏、フレーズ、各パートごとでの弾き分け、歌のメロディーに合わせたフレージングなど、引き出しが盛りだくさん!!宇都さん書籍出してー!!余裕があれば後ほど参考譜面なども制作したいところですが、取り急ぎ文章だけで執筆させていただきました。

ピアノに注目して聴いたところで、最後に原曲も聴いてみましょう。めっちゃピアノのフレーズ聴こえてくる。ありがとうございます!!

 

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